「九番館」ヒラヤマ探偵文庫06

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お一人様一冊まで
ヒラヤマ探偵文庫06
「九番館」
著者:長田幹彦
解説:湯浅篤志
発行元:ヒラヤマ探偵文庫
発行年月:2019年11月
価格:1,500円 



「頭から足の先まで真っ暗な衣を被って、顔には目だけを明けた同じ色の覆面をしている」――松枝子のそばに立つ、謎の覆面男現る。長田幹彦、初の探偵小説!!

長田幹彦(ながたみきひこ、1887~1964)は、大正から昭和を駆け抜けた大衆文学作家であり、しかも流行作家であった。明治の終わり、谷崎潤一郎と並んで、文壇の寵児としてもてはやされた。しかし、長田自身、文壇の中だけでは飽き足らず、婦人雑誌、家庭雑誌、新聞などに長編、短編作品を数多く発表する。映画化された作品も多く、人々の好む男女の恋愛のもつれを「哀艶情話」として表現することができたからだ。それゆえ、文壇文学作家としてスタートしたのにもかかわらず、やがて通俗文学作家としてみなされるようになってしまった。ここに収録した『九番館』は、大正10(1921)年に発行された長田幹彦の初めての「探偵小説」である。社会小説を下地にしながらも、アルセーヌ・ルパンのような義賊を出現させているところに長田らしさがあふれている。当然、読者を意識してのことだろう。さらに文学的な風景描写も秀逸で、さすが谷崎と並び称されたこともある作家の文章である。「九番館」と呼ばれる教会には、いったい何が潜んでいたのであろうか。