本の探偵 戦後探偵小説資料集Ⅰ 飛鳥高/大河内常平/楠田匡介/栗田信

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本の探偵
戦後探偵小説資料集Ⅰ
飛鳥高/大河内常平/楠田匡介/栗田信
編著者:森英俊・野村宏平
発行日:2020年10月31日 初版発行
部数:400部
判型:A5判 152ページ(内、128ページカラー)
表紙デザイン:小山力也(乾坤グラフィック)
価格:5,000円

刊行日:2020年10月10日
予約開始日:2020年10月4日17時~


飛鳥高・大河内常平・楠田匡介・栗田信の魅力のすべてがこの一冊に!

 探偵小説という名がまだ一般的だった昭和三十年代、街の新刊書店にも場末の貸本屋にも、妖しげな魅力を漂わせた探偵小説があふれかえっていた。各方面から好評をいただいた〈本の探偵〉シリーズの第二弾にあたる本書『戦後探偵小説資料集 Ⅰ』』は、そんな昭和三十年代の熱気を書影と作品評とを通じて感じとってもうらうべく、企画したものである。
 今回、取りあげた作家は、飛鳥高・大河内常平・楠田匡介・栗田信の四人で、やはり昭和三十年代に単行本が集中している。それらが本書のハイライトではあるが、それ以外にも、楠田匡介の『模型人形殺人事件』のように、昭和二十年代に刊行されたもの、昭和四十年代以降の単行本、さらには平成の終わりから令和の初めにかけて商業出版社(論創社・戎光祥出版など)やリトルプレス(書肆盛林堂・湘南探偵倶楽部など)から刊行された作品集も、網羅してある。

『戦後探偵小説資料集 Ⅰ』』をめぐるQ&A

Q:〈本の探偵〉シリーズの第二弾が出るということですが、ずいぶんと間が空きましたね。
A:他の仕事と同時並行的に進めていたので、当初の予定よりも完成までにだいぶん時間がかかってしまいました。続刊を楽しみにしてくれていた方々をお待たせしてしまい、申しわけない思いでいっぱいです。

Q:第一弾で偕成社のジュニア探偵小説を取りあげたので、今度はポプラ社のジュニア探偵小説になるのではと、予想していた向きもあったようですが。
A:正直いうと、ポプラ社のジュニア探偵小説の全集のなかでいまだに入手できないものが何点かあって。どうせやるなら中途半端なものは作りたくないので、そちらが揃ってから着手する予定にはしています。

Q:『戦後探偵小説資料集 Ⅰ』となっているからには、続きも期待できるということでしょうか?
A:第一弾にどの作家を入れるかというのは、編者どうしも頭を悩ませ合ったところで、結局、ある程度の冊数があり、装幀に魅力もある、テイストの異なる作家を選びました。当初は狩久も候補作家のひとりだったのですが、近年出た、装幀の同じ全集中心になってしまうのがネックで……面白味のない書影と活字ばかりだと、どうしても頁構成が単調になってしまいますからね。
 実際、昭和三十年代の探偵小説は、目を惹く装幀も作品の魅力の一端を担っているのは間違いのないところでしょう。たとえば、飛鳥高の『犯罪の場』では、真鍋博がかなり攻めた感じで装幀を手がけています。なにせ、カバーに穴を開けてしまっているのですから。大河内常平の『地獄からの使者』のエロチックさや、栗田信の『醱酵人間』のインパクトなど、貸本出版社と呼ばれているマイナー出版社のあくの強いカバーにも捨てがたい味があります。ひと目見れば忘れられなくなること請け合いで、新刊書店や貸本屋でもさぞかし異彩を放っていたことでしょう。

Q:必然的に、『戦後探偵小説資料集 Ⅰ』も、見て愉しい読んで愉しい内容になっていると。
A:二〇二〇年の上半期までに出た、飛鳥高・大河内常平・楠田匡介・栗田信の単行本を網羅し、すべての収録作品にふれてあるというのが、最大の売りになっています。加えて、書誌情報も充実させるべく、巻末にはそれぞれの作家の作品リストを用意しました。楠田匡介の新発見の少年物、栗田信の倶楽部雑誌掲載作品など、初公開となる情報も可能なかぎり盛りこんであります。
 評論的なかた苦しさを極力避けるべく編集してありますので、全貌のなかなか知られてこなかった探偵作家たちの読書の手引きとして、そしてまた資料として、ご愛読いただけば幸いです。